Haworthia comptoniana
Eden Plantsから輸入した植物第4弾?
またレツーサ系だが、ナンバー付があまり出回っていないので仕方ない。園芸的にコンプトと言われているものはほとんどベイエリの血が入っているらしい。交配は面白いし、すごい個体ができるから歓迎だが、できれば由来を明らかにしてほしい思う。そのほうが面白いし。
Haworthia comptoniana JDV90/008 (IB6454), Vaalkranz, W of willowmore. 窓がつるつるぷりぷりでいい感じ。成長は結構はやい。 (2020. VI. 5.)
改良されたコンプトは窓に網目模様があるが、その片鱗はなんとなく感じる。毎回書いている気がするが、これ系のハオルチアは、草系よりもやや暗めに作るとちょうどいい感じ。手前に写っているレツーサはやや間延びしてしまったので建て直し中。
単独植えにしたいが、そろそろ場所がなくなってきたので、棚を整理したら単独にする予定。小さい鉢に植えてもいいが、乾きやすくなるからか成長がかなりおそくなるので、寄せ植えのほうが育ちが安定するっぽい。
以下学名に関して。
現在kewで有効とされているのは
Haworthia emelyae var. comptoniana (G.G.Sm.) J.D.Venter & S.A.Hammer, Cact. Succ. J. (Los Angeles) 69: 77 (1997).
正直これがemelyae(ピクタ)の変種と言われてもピンと来ない。私は独立種だと思っているので、
Haworthia comptoniana G.G.Sm., J. S. African Bot. 11: 76 (1945).
の学名を推したい。もちろん、産地とかタイプとか見ないとなんともいえないわけだけど。
データ付き九輪塔
最近は草系のハオルチアだけでなく、硬葉系やレツーサ系のハオルチアも集めるようになってしまった。
普及品種ほど雑に扱われがちで、名前がテキトーだったり、データがなかったりする。
ということで2018年、草系を購入するついでにEden Plantsから硬葉系ハオルチアを輸入。そしたら思いのほかかっこよかったので他の種もほしくなってしまった。
Haworthia coarctata (左)とH. reinwardtii (右). 質感はよく似ているが、葉の結節(白いやつ)の付き方が全く違う。成長は思ったより早い。
似たりよったりのものが多い硬葉系のハオルチアだが、並べると結構ちがう。
硬葉系のハオルチアの園芸名はなんか似たような名前のものが多くあるため、どれがどの種(個体?)に対応するかよくわからない。
Haworthia coarctata IB6543, Holling Grove. いたって普通の硬葉系ハオルチア。白点は小さく、裏面にしか存在しない。いわゆる「九輪塔」とよばれているのはこのタイプか?
Haworthia reinwardtii DMC12189, Percival. H. reinwardtiiはもっと葉が長いイメージがあるが、これはそうでもない。白点は葉の表にも少し出る。
以下お名前タイム
H. coarctata ははじめからHaworthiaとして記載。
Haworthia coarctata Haw., Philos. Mag. J. 66: 301 (1824).
その後、アロエに移ったりしながら、変種に降格。
Haworthia reinwardtii var. coarctata (Haw.) Halda, Acta Mus. Richnov., Sect. Nat. 4(2): 40 (1997).
現在は種の位置で、Haworthiopsisに移動。
Haworthiopsis coarctata (Haw.) G.D.Rowley, Alsterworthia Int., Special Issue 10: 4 (2013).
Breuerはreinwardtiiの変種としている。
Haworthiopsis reinwardtii var. coarctata (Haw.) Breuer, Alsterworthia Int. 16(2): 7 (2016).
H. reinwardtiiはあまりシノニムがない。はじめアロエとして記載され、
Aloe reinwardtii Salm-Dyck, Observ. Bot. Horto Dyck.: 37 (1821).
その後ハオルチアに移動
Haworthia reinwardtii (Salm-Dyck) Haw., Saxifrag. Enum. 2: 53 (1821).
現在はそのままハオルチオプシスに移動。
Haworthiopsis coarctata (Haw.) G.D.Rowley, Alsterworthia Int., Special Issue 10: 4 (2013).
やはりHaworthiaとHaworthiopsisが分かれているのは慣れない。まあ軟葉系と硬葉系は別属になっても不思議ではない程度には見た目が違う気がする。実際葉緑体DNAの系統樹ではAloeやらGasteriaやらが内群になるようだし。ただ、見た目的には軟葉系と硬葉系は1グループっぽい。たぶん交雑して変な感じになっているのでは。
Haworthia radula
2018年にドイツのEden plantsから輸入したハオルチアのうちの一つ。いわゆる硬葉系のハオルチアも、日本ではデータ付きのものが少ないのでいくつか輸入してみた。
数種類輸入したが、これはいわゆる「松の霜」と呼ばれているものだろう。
あまり人気のない種類だが、自生地はかなり少なく、農地開発の影響で個体数が減っているらしい(http://haworthia-gasteria.blogspot.com/2008/09/haworthia-attenuata-var-radula.html)。
Haworthia radula MBB6831, Halleluja, N of Hankey 比較的大柄。 (2020. VI. 8.)
最近分頭をはじめたので、姿がよろしくないが、成長自体はいい。
よく見る十二の巻に似ているが、白点の付き方と、葉の形が異なる。株の増える速度は速そう。
Haworthia radula MBB6831, Halleluja, N of Hankey 細かい白点が葉の両面に付く。(2020. VI. 8.)
最近ようやく硬葉系の育て方が分かってきた。思ったより暗めの環境のほうが成長が良い。ただ、暗すぎると間延びして葉が細くなる。
自生地の写真を見ると、茂みの中に生え、周囲には苔が生えているので、そこそこ暗く、水分がある程度ある方がいいのかもしれない。
以下、分類の話。
最近は、硬葉系のハオルチアは、Haworthia→Haworthiopsisとして扱うことが多いようだ。確かに、葉緑体の遺伝子と株の形態をみると軟葉系のものと別系統なのは確かだろう。
で、この種類はもともとアロエとして記載され、
Aloe radula Jacq., Pl. Hort. Schoenbr. 4: 11 (1804).
その後、Haworthiaに移動。
Haworthia radula (Jacq.) Haw., Syn. Pl. Succ.: 93 (1812).
その後H. attenuataの変種に降格。
Haworthia attenuata var. radula (Jacq.) M.B.Bayer, Haworthia Revisited: 167 (1999).
で、現在は変種のままHaworthiopsisに移動した。
Haworthiopsis attenuata var. radula (Jacq.) G.D.Rowley, Alsterworthia Int. 15(Apol.): 2 (2015).
このページでは慣例というかまとめるのに便利なのでHawrothia radulaとしている。
Haworthia venusta
毛深いハオルチアとして有名なヴェヌスタ。数年前にナンバー付きの個体がヤフオクに出ていたので購入。
同じ産地でも個体差があるらしく、葉の大きさや毛深さがいろいろ違うらしい。というか別ナンバーでも産地は1か所、しかも20m四方(!)しかないらしい(http://haworthia-gasteria.blogspot.com/2008/02/haworthia-cooperi-var-venusta.html)。よくみつけたなーと思ったが、やはり記載以降しばらく見つかっていなかったようだ。
Haworthia venusta GM292, NE of Alexandria この個体は葉の幅がかなり広い。青みをおびたグレーが綺麗。(2020. VI. 8.)
ふつうの軟葉系ハオルチアより少し暗めの環境で作っているが、間延びしないのでこれが正解らしい。
好きな原種なのでもう数個体ほしいが、ナンバー付はあまり出回らないのでとりあえず葉挿しでもするしかない。
Haworthia venusta GM292, NE of Alexandria もう少し毛深い方が好きだがデカいので満足。 この毛はなに由来なんだかよくわからない。鋸歯ではないし、トリコームでもなさそう。(2020. VI. 8.)
おまちかねNomenclatureタイム!!
原記載は、
Haworthia venusta C.L.Scott, Bradleya 14: 87 (1996).
だが、BayerはこれをH. cooperiの変種に降格させて
H. cooperi var. venusta (C.L.Scott) M.B.Bayer, Haworthia Revisited: 56 (1999).
ちなみにBreuerはH. salinaの変種として、
H. salina var. venusta (C.L.Scott) Breuer, Alsterworthia Int. 16(2): 6 (2016).
個人的には独立種でいいと思うが、H. salinaを見るとなんか変種な気がしてこなくもない。ちなみに記載が載ってる雑誌はフリーでは読めません。なのでタイプとかの話はできない。
ハオルチアはDNAでも見ればいろいろと分かるだろうけど、ハオルチア界隈には分子系統樹の原理をわからずに批判してるような研究者がいるのでめんどくさそう。指摘の大部分は妥当だけど、根本的な部分は勉強してないことが分かる内容。もっともハオルチアは交雑が頻繁に起こってそうなので、葉緑体数領域で良い系統樹が描けるとは思わないが、多分いまならいろいろできる気がする。やるか。
Haworthia bayeri
先日紹介したピクタと一緒に、2018年にEden Plantsから輸入したハオルチア・ベイエリ。一般にコレクタと言われるやつの中には、これの血がはいっているやつもあるのかもしれない。
Haworthia bayeri IB07095, Uniondare, top of hill with the old fort まだまだ小さい。早くあのつやつやの窓をつけてほしい。 (2020. VI. 5.)
この個体の産地は、丘の上の城跡の近くらしい。自生地の写真があがっているが、たしかに石垣のようなものが見える(http://haworthia-gasteria.blogspot.com/2008/02/haworthia-bayeri.html 10枚目くらいの写真)。
栽培はふつう。特に難しいわけでもなく、成長スピードも遅くはない。ただ分頭はしないようだから、増やしたいなら葉挿しなりしないといけない。
以下、分類のお話。ベイエリはKewのリストでもAcceptedになっている。
Haworthia bayeri J.D.Venter & S.A.Hammer, Cact. Succ. J. (Los Angeles) 69: 75 (1997).
Haworthia hayashiiはこれの変種とするのがしっくりくるが、kewではこれのシノニム扱い。
原記載のあるCactus and Succulent Society of America発行のCactus and Succulent Journalは持っていない&読めないので、タイプロカリティーの話とかはなしで。いつも思うのだが、このご時世、記載文だけでいいからネットに掲載しないのはどうなのか・・・そのうち記載の用件にフリーアクセスが含まれるようになるかもしれない。
Haworthia picta
ブログの名前に反してハオルチア以外ばかりあげている気がするので、たまにはハオも。
ハオルチアをやってる人は大きく分けて原種屋さんと交配種屋さんがいると思うが、自分は原種屋。謎の交配種はあまり育てる気がしない。
日本で流通するいわゆるピクタやコンプト系は交配ばかりで、由来が不明なのが多い。ということで、ドイツのEden Plants からいろいろと輸入してみた。2018年に輸入。20種類くらい輸入したうちの1種。残りはそのうち紹介予定。
輸入自体はショッピングカート式で簡単。ただ、夏場に輸入するのはリスクが高いかも。
Haworthia picta GM259 30km South of Oudtshoorn 派手さはないが、透明感とハリの感じが好み。ここからあのツブツブむちむちの品種ができたと思うと感慨深い。(2020. VI. 5.)
原記載は結構古く約80年前。
Haworthia picta Poelln., Repert. Spec. Nov. Regni Veg. 44: 133 (1938).
Kewのチェックリストだと
Haworthia emelyae Poelln., Repert. Spec. Nov. Regni Veg. 42: 271 (1937).
のシノニム扱いになっている。ぶっちゃけ押し葉標本みてハオルチアの分類ができるのかよーわからんので、タイプ産地を比較してみる。
H. pictaのタイプ産地は「Moeras River bei Little Brak River」らしいが、どちらも同名の川と地名がある。つまり、①Little Brak River町近くのMoeras River町、②L町近くのM川、③L川近くのM町、④L川近くのM川があり得るが、地図を見る限り①か②のようだ。上の写真の個体の採集地である、Oudtshoorn の南30km地点もちょうどそのあたり。
一方でH. emelyaeのタイプ産地は採集地不明(Fundort unbekannt)らしい。詰んだ。ディスクリプションを読めば形態の差がわかるかもしれないが、ディスクリプションそのものがラテン語なのはいいとして、その後の補足解説がドイツ語なのが面倒。気が向いたら読むかも。
気になった人は原文読んでみてください。マドリード王立植物園のページから原文が読めます(https://bibdigital.rjb.csic.es/records/item/10615-repertorium-specierum-novarum-regni-vegetabilis)。