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草と分類

Cymbidium nanulum

4大洋蘭の一つとして数えられるシンビジウム(Cymbidium)。鮮やかに改良された贈答用の品種が昔から多く出回る一方、最近は「和蘭」という商品名で東洋蘭の血を入れた落ち着いた品種も流通するようになってきた。

個人的には原種のシンビの良さがもっとしられてもいいと思うが、やはり原種シンビは株のサイズが大きいことが欠点だろう。

シンビの原種は東南アジアを中心に70種ほどが存在している。特に洋蘭の交配に使われるような原種は大型のものが多いが、特に東洋蘭とされるものの周辺には小型の種類がいくつか存在する。

このような種類はあまり流通せず、交配にもほとんど用いられない。しかし、なかなか面白い性質をもっており、交配に使われるようになれば交配シンビのバリエーションが広がるのは間違いないだろう。

今回紹介するのは、中国雲南省周辺からインドにかけて分布する、小型の原種Cymbidium nanulum (中国語名 珍珠矮)である。中国ではよく栽培されているらしいが、栽培が難しく、日本への導入は数回しかなされていないようだ。高さ15cmほどで開花するため、この性質が洋蘭に導入できれば、小型の交配種が作れるかもしれない。

日本での開花例は個人のブログで紹介されていたものと、「自然と野生ラン」の広告に開花株の写真が掲載されているものしかみたことがない。今回、家の栽培棚で2株開花させることに成功したので、紹介する。

 

Cymbidium_nanulumの花

Cymbidium nanulum. 建蘭(Cym. ensifolium)や小蘭(Cym. koran)を小型にしたような花。香りもよく似ている。高さは15cmほど。(2020. VI. 10.)

 

Cymbidium nanulum. 先ほどとは別の個体。この個体は花が小さいが、作によって変わりそうなので、なんとも言えない。(2020. VII. 28.)

 

栽培は東洋蘭に準ずるが、ややクセがあり、気を使った方がいい。また、バルブが無く地下茎のみのため、普通のシンビより弱い可能性があるが、不明。

過去にはCymbidium ensifolium(スルガラン)の小型の変異個体とみなされ、シノニム扱いされることもあったが、写真をみればわかるように、明らかにスルガランとは異なる。株サイズ以外にも、葉の形や鋸歯の粗さが花の構造などが異なる。

原記載は、

Cymbidium nanulum Y.S.Wu & S.C.Chen, Acta Phytotax. Sin. 29: 551 (1991).
タイプ産地は中国の雲南省 六庫。雨季と乾季に分かれ、冬の気温はあまり下がらないようだ。また、近年インドからも発見されており、ミャンマーなどにも分布している可能性がある。